1. お客さまとの取引時確認


代理店が保険会社に代わり、お客さまとの間で、貯蓄性の高い保険契約の締結や大口現金取引等、犯収法上の特定取引を取り扱う際には、各保険会社のリスクベース・アプローチに沿って策定された顧客管理等に関する取扱いルール等に沿って、取引時確認を適切に行う必要があります。


(犯収法において求められる取引時確認事項)

個人のお客さま 法人のお客さま
本人特定事項(「氏名」、「住所」、「生年月日」)のほか、「取引目的」、「職業」、「外国PEPs等の該当可否」、「取引担当者の代理権」を確認 法人及び代表者等の本人特定事項(「名称」、「所在地」、「氏名」、「住所」、「生年月日」)、「取引目的」、「事業内容」、「法人の実質的支配者の有無」、「実質的支配者の本人特定事項」、「実質的支配者が外国PEPs等の該当可否」、「取引担当者の代理権」を確認

※上記に加えてハイリスク取引かつ200万円超の財産の移転有の場合は、「資産および収入の状況」を確認


 > 犯収法におけるハイリスク取引

[実務上の留意事項]

  1. ① 上記取引時確認において本人特定事項を確認する際には、運転免許証・パスポート・個人番号カード等の犯収法令上の本人確認書類としての要件を充たす証明書等により実施する必要があります。
    (注)健康保険証の提示のみでは犯収法令上の本人確認書類要件を充たさないため、これに代えて運転免許証、パスポート、個人番号カード等の提示を求めるか、あるいは健康保険証と共に印鑑登録証明書又は社会保険料や公共料金の領収書等の提示を求めることが必要となります。
  2. ② 保険会社によっては、上記のほか、マネー・ローンダリング/テロ資金供与の防止の観点から追加的な情報取得を求めている場合があるため、それぞれの事務マニュアルに従って取引時確認を行う必要があります。また、保険会社の判断により、追加のお客さま情報の取得が求められた場合には、適切に追加情報を取得します。
    ※金融庁マネロンガイドラインにおいて金融機関等に対し、マネロン・テロ資金供与リスクが高いと判断した顧客については、資産・収入の状況、取引の目的、職業・地位、資金源等、リスクに応じ追加的な情報を入手することが求められています。
  3. ③ 代理店として既に取引時確認を行ったことがあるお客さまであっても、保険会社毎に都度取引時確認が必要となる点には留意が必要です。
  4. ④ お客さまが取引時確認に応じない場合には、手続きを行ってはいけません。

2. 金融庁への「疑わしい取引」の届出


保険会社は犯収法に基づき、犯罪収益である疑いがある場合や、マネロン行為が疑われる場合には、速やかに金融庁へ届出を行うことを義務付けられています。
保険募集の過程で、お客さまの情報を初めに知り得る保険募集人はマネー・ローンダリング防止において重要な役割を担っており、代理店において取り扱った取引のうち、犯収法において「疑わしい取引」の届出が求められる事項に該当すると判断される場合には、直ちに保険会社へ報告する必要があります。


(犯収法において「疑わしい取引」の届出が求められる事項)

  1. 当該業務において収受した財産が犯罪による収益である疑いがある場合
  2. 犯罪収益等隠匿罪(組織的犯罪処罰法第10条)もしくは薬物犯罪収益等隠匿罪(麻薬特例法第6条)に当たる行為を行っている疑いがあると認められる場合

[実務上の留意事項]

  1. ① 疑わしい取引への該当については、生命保険協会「マネー・ローンダリング/テロ資金供与対策ハンドブック」記載の「疑わしい取引の具体的事例」等を参考とします。
    (参考)生命保険協会「マネー・ローンダリング/テロ資金供与対策ハンドブック」
    https://www.seiho.or.jp/activity/guideline/pdf/laundering.pdf
  2. ② 疑わしい取引への該当が疑われる場合には、直ちに社内マネー・ローンダリング防止責任者へ連絡のうえ、各保険会社の定める方法に従って保険会社あて報告を行います(契約不成立の場合も含む)。
  3. ③ 取引の相手やその関係者に対し、疑わしい取引の届出を行おうとすること、または疑わしい取引の届出を行なったことを伝えることは、犯収法で禁じられています。

以 上